新型ウイルスがまん延する以前、年間約50万人が佐渡の地に足を運んでいた。ある人は大空を羽ばたくトキに心を奪われ、厳かな神社仏閣で一人物思いにふける。またある人はインスタ映えする島の風景に見とれ、時を忘れる。食べ物一つとっても四季折々、実に多彩だ。いごねりやすしなどの「定番」からおしゃれなカフェのランチといった「新顔」まで、伝統と最先端のものが常に共存しながら、佐渡は未来へ向け絶え間なく進化を続ける。
「SADOプライド」を展開する新潟日報社と佐渡観光応援公式サポーターを務めるNGT48がコラボした「NGT48推し旅」も4回目。「国中編」でフィナーレを迎える。本間日陽(ひなた)さん(24)=村上市出身=と西潟茉莉奈さん(28)=東京都出身=が晩秋の国中地域を巡り、島の魅力を伝える。
【牛尾神社】
792(延歴11)年の創建と伝わる新穂地区の牛尾神社では、権禰宜(ごんねぎ)の佐山寿実杜さん(28)を案内役に、拝殿や子宝に御利益があるとされる「安産杉」などを巡った。
USHIO
SHRINE
1899(明治32)年の火災で焼失後、再建された拝殿の前にたたずみ、龍や獅子、鯉などをあしらった彫刻に見とれる2人。「腕利きの職人の作品であり、これだけのものは今では作れない」との佐山さんの説明に、西潟さんは「彫刻が精巧ですごい。これからも受け継いでいってほしい」と感嘆の表情を浮かべた。
樹齢約千年、高さ約30㍍の安産杉に両手を回しながら、「パワーをもらった」とほほ笑む本間さん。霊験あらたかな神社を後にするころには、2人の足取りは心なしか軽くなり、元気がみなぎっていた。
【妙宣寺】
由緒ある寺や神社が数多く点在する佐渡。意外にも「神社仏閣巡りが大好き」と言う本間さんと「佐渡の歴史を勉強中」の西潟さんは、真野地区にある妙宣寺の山門をくぐり抜け、境内に足を踏み入れた。
MYOSEN TEMPLE
そこは街中の騒がしさがうそのような静かな空間。色づき始めた木々に囲まれ、県内唯一現存する五重塔がそびえ立つ。江戸時代後期に建てられた高さ約24㍍の塔は、国の重要文化財に指定されている。2人はしばし足を止め、均整の取れた美しい姿を目に焼き付けた。
住職の関道雄さん(80)から五重塔の来歴や構造などについて説明を受けた2人。「間近で見ると歴史の重みを感じた」と本間さん。西潟さんは、「これぞ大人の旅」とばかり塔の前でしとやかにポーズを決めた。
AMEYA
SANBASHI
「抜けるような青空と澄み切った海は最高」とはしゃぐ本間さん。西潟さんは自前のカメラで本間さんの笑顔を捉え「映えショットがたくさん撮れた」と満足した様子だった。この日は平日にもかかわらず、観光客の姿も。大阪府吹田市の大学院生、山村梨子さん(25)は「旅の良い思い出になった」と、仲間と一緒に写真に納まった。
「なぜあめやなのか」と名前の由来の興味を持つ2人。かつて日用雑貨を輸送するために桟橋が設置されたこと、桟橋を引き継いだのがみそ醸造業の「飴屋(あめや)」だったことなど橋の変遷を学んだ。
2018年に改修された桟橋ではNGT48のミュージックビデオの特典映像も撮影された。。物流施設から観光客が集まる映えスポットへ。歴史は脈々と紡がれていく。
【映えスポット】
インスタ映えする島内の映えスポットは多いが、中でも人気を集めているのが佐和田地区にある「あめやの桟橋」だ。真野湾を望む佐和田海水浴場に造られた長さ約30㍍の桟橋はまさに「海のランウェイ」。2人は絶景を堪能しながら、ファッションモデルになりきり、橋の上を何度も往復した。
【トキ】
2008年の放鳥以来、島内には500羽を超す野生のトキが生息する。「定着」までの道のりはまだ長いが、島民にとって「トキがいる風景」はごく当たり前のことになっている。
そして待ちに待ったトキとのご対面。ケージの中で羽ばたくトキの姿を見つけた本間さんは「思ったよりたくさんいて感動した」と興奮し、西潟さんは「これからどんどん増えていってほしい」と熱い視線を送った。
ケージを離れた2人は敷地内にある「トキふれあいプラザ」へ。えさの時間はより近くで見ることができるため期待は高まるが、残念ながらトキの親子3匹は木の上でまったりと休憩中。望遠鏡をのぞきこみ、観察を続けた。
旅の途中、田んぼに降り立った野生のトキを見つけた2人。遠目からその姿を見守り、トキと人との共生を実感していた。