





恐ろしい形相の鬼たちが、
住民の幸せを願って舞う島―佐渡。
この鬼はいつから島に棲(す)み、どうして島民から愛される存在になったのか、確かなことは分からない。ただ、江戸時代の文献に「鬼太鼓」という呼称が見える。同じ時期の絵巻にも鬼太鼓とみられる絵がある。相川の金銀山で働いていた人々が鬼面を付け、太鼓を打っていたようだ。
鬼には地域の家々を回って厄をはらい、 五穀豊穣を祈るなどの役割もある。いまでも島内120ほどの集落で、伝統芸能として受け継がれている。しかし鬼の舞い方、太鼓のリズム、笛や獅子の有無など、集落によっていくつもの違いがみられる。それぞれの鬼太鼓には「うちが一番」という 誇りと地域のアイデンティティーが詰まっている。
古くから鬼は大人たちの役目だったが、子どもの鬼もいる。1974年には 畑野地区の小倉 小学校(2013年3月閉校)が郷土を思う心をはぐくむ教育の一環として、「小倉子ども鬼太鼓」の活動をスタートさせるなど、子どもたちが担い手に 加わる集落もある。
新穂地区の青木。住民に子どもの鬼を見たいと依頼すると、地元の熊野神社に新穂中1年の川上純平さん(12)と行谷 小6年の川上世友さん(11)が鬼になって現れてくれた。ここでは面の色でなく、髪の色で鬼を白と黒に区別する。純平さんが白鬼、世友さんが黒鬼。どちらも髪を 振り乱しながら、勇ましく舞い始めた。
伝統を守るなどという気負いはない。ただ「かっこよく舞いたい」と思って練習に励むと、「楽しかった」。見ていた大人たちが「もっと腕を上げて」「上を向いて」と声を上げた。集落の鬼太鼓を守るために、そして、子どもたちの成長を願って。
子ども の白鬼も黒鬼も金銀山が世界 遺産になることを望んでいる。「佐渡の 知名度が上がるとうれしい。いろんな人に知ってほしい」。その言葉は、郷土を誇りに思っている証だ。









「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録に向けて、
佐渡島内で推進活動や保存活動をされている方々から
応援メッセージをいただきました。

待ちに待った国内推薦発表の日が近づいています。「佐渡島の金山」の世界遺産登録を応援する皆様と共に、決定の喜びを分かち合えると信じております。道のりが長かった分、喜びも大きくなるでしょう。晴れて国内推薦をいただいた暁には、その喜びをエネルギーにして「世界遺産登録」に向かって、皆様と共に新たな歩みを進めて参ります。
(一社)佐渡を世界遺産にする会/会長
中野 洸 さん

「史跡 佐渡金山」には道遊の割戸や宗太夫坑を始めとするさまざまな間歩、南沢疎水坑があります。また大立竪坑や北沢浮遊選鉱場跡、大間港など先人たちが残してくれた数々の鉱山遺跡があります。これら素晴らしい日本の宝が世界文化遺産に登録され、より多くの方々にご覧いただけるよう(株)ゴールデン佐渡は維持管理に努め、次世代に引き継いでいきます。皆様のご支援ご協力をお願いします。
株式会社ゴールデン佐渡/取締役社長
河野 雅利 さん

祖父は相川で小さな旅館を営んでおりました。毎朝お客様と佐渡金山まで続く坂道を上りそこに集う工夫さんたちにまつわる面白話をしながらご案内しておりました。トロッコで川沿いを下り寄り分けられた不要石は海岸まで運ばれます。祖父はその石を大事そうに持ち帰りました。今でも我が家の語り草です。きっとどこの家にもある金山四方山話。金山の町に生まれ育った私たちは、語り継いでいきたいお話がたくさんあります。
美佐渡会/会長
深見 聖子 さん
