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佐渡ジオパーク

​GIHAS

Vol.4

 自然とともに暮らし、自然を生かす島―佐渡。水田でトキがドジョウや昆虫をついばみ、集落の神社では豊作を願う芸能が奉納される。山や川、湖の恵みが季節ごとにもたらされ、海岸に続く奇岩や岩礁、断崖は学びや観光の場になった。  いま、島には「三つの宝」があると、島民は言う。世界農業遺産GIAHS(ジアス)、大地の遺産ジオパーク、 そして世界文化遺産登録を目指す金銀山。いずれも 佐渡特有の自然と人々の生活や文化を象徴している。  古い火山活動の結果、地中に金銀鉱床が生まれ、 沖に流れる暖流と寒流の影響などから多様な植生が見られる。それらに魅了された多くの人々が島の歴史をつくり、今また多くの努力によって、世界に誇る 新たなページが加えられようとしている。

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自然と共生する暮らしと文化

トキと歩む米作りへの誇り

 トキが島内で放鳥されて14年の 今年、野生下の生息数が500羽を 超えた。稲作農家でつくる「佐渡トキの田んぼを守る会」の活動スタートからは20年がたった。会長の齋藤真一郎さん(61)=新穂青木=はあらためて願う。「トキが増えることで、自然に対する農業の役割についても関心が高まってほしい」と。

 同会のメンバーはトキの餌となる水生生物や昆虫を育てるため、無農薬あるいは減農薬、さらに化学肥料も減らす稲作を続けている。水田の 脇には深さ30㌢ほどの側溝「江(え)」をつくり、通常は水を抜く冬季にも 水をはる「ふゆみずたんぼ」を実践 する。

 「昔、島の空を飛んでいたトキの姿を復活させたいという先輩たちの思いを聞き、そんな風景を見たいと思った。生き物を増やす農業技術にも興味があった」。それが、齋藤さんが活動を始めたきっかけだった。  農業は自然に対してだけでなく、農作業に合わせた春や秋の祭りなど、人々の暮らしとその文化にも深く影響してきた。齋藤さんの住む地域には鬼太鼓や能、田起こし唄や踊りが伝わる。それらが「集落の活力やまとまりにつながる」と、農村文化を守る思いも強い。  

 ジアスは2011年に国際連合食糧農業機関から認定された。トキの餌場を確保し、生物多様性を守る環境保全型農業を消費者と連携しながら広げたことや、佐渡金銀山などの影響もみられる農村文化を維持してきたことが評価された。  

 齋藤さんは言う。「米作りに誇りを持っている。安心安全でおいしいと」。その上で「若い人たちがSNS(交流サイト)などで佐渡を自慢し ているのを見るとうれしい。これもトキのおかげかな」と目を細めた。

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農業生産法人有限会社 齋藤農園代表取締役、 佐渡トキの田んぼを守る会会長
齋藤 真一郎さん
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「まるで火星?」宿根木海岸

大地が織りなす不思議が魅力

 島の南西、宿根木海岸には「まるで火星?」と記載された案内板がある。海底が地震によって陸になった赤茶けた大地「隆起波食台」が広がっている。波で転がる石が削った甕(かめ)状の穴「波食甌穴(はしょくおうけつ)」もある。

 「それを見たとき、長い年月をかければ、こんな不思議な穴もできるんだ、佐渡って面白いじゃないって思った」。そう話すのはジオパークガイドの長嶋訓子さん(70)。神奈川県で生まれ、東京で育ち、2016年2月から夫の実家がある佐渡で暮らす。知らない土地のことを学ぼうと、市のジオパーク講座を受講したところ、「ガイドにならないか」と誘われ、21年4月に認定された。

 初めてのガイドはその年の8月、親子3組7人のグループに「火星」を案内した。そこにはかつて住民が海藻を運ぶために掘った隧道が残る。海水を煮て塩を作ったときに使った岩石の煙突や、石垣や家の基礎にする石を切り出した跡も。厳しい地形の中にも人々の歴史を見いだせる。親子は「また来たい」と言ってくれた。うれしかった。  佐渡のジオパークは日本ジオパーク委員会から2013年に認定された。300万年前から続く地殻変動によって島ができたことを示す景観や地質を保全し、それを教育や観光の 資源として生かしてきたことが評価 された。

 ガイドの対象は名勝地の尖閣湾、 カキが養殖される加茂湖、そして金銀山など、いくつもある。長嶋さんのお気に入りは、急な斜面を生かして作られた棚田。「人のもともとの暮らしとぬくもりを感じる。そこに吹く風も 好き」。そうして島の良さが分かる島の人になった。

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佐渡ジオパークガイド
長嶋 訓子さん